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PCR検査って治療法?じゃないですよね

皆さんはゴールデンウィーク、いかがお過ごしでしたでしょうか?3密、しっかり回避されたでしょうか。安倍首相の「人との接触機会80%削減のお願い」にどれほど日本国民が応えたのかを知りたくて、最終日6日夜のNHKニュース9をみてみました。観光地などは軒並み前年比90%を越える減少率ということで、さすがわれら日本国民、まだまだ捨てたものではないと救われた気がしました。

このゴールデンウィークの間に、緊急事態宣言が1か月延長され、自治体ごとに対応が求められる状況になりました。5月4日には専門家会議の会見が開かれ、専門家会議の尾身副座長を中心に「新しい生活様式」の提言ほか、さまざまな問題について説明が行われました。

この新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、何らかの症状を自覚する2日前から発症後1週間程度にわたって感染力を発揮するということがわかってきました。発症の2日前から他人に感染させる能力があるということから、それを洗い出すために無症状の人をすべてPCR検査の対象とすることは非現実的であり、改めて身体的距離の確保、手洗いの励行、マスクの着用の重要性を強調しておられました。

会見では一方、症状がありながら検査を受けられない人をなくすことは重要で、PCR検査体制の拡充をさらに進めるとともに、4日自宅で様子を見てというハードルも取り払うことを検討しているとのことでした。迅速診断キットの開発も心待ちにしている様子でした。

PCR検査については、検査数は増加してきている中で陽性率は減少してきている、との説明がありました。この説明を聞いていて知りたいと思うことが出てきました。

マスコミの報道姿勢、国民の要望、医療者の要望などから、最近ではPCR検査がこれまでの対象者より幅広い形で受けられるようになり、COVID-19にかかった人以外の方を検査する機会も増やしていることが容易に想像されます。これが事実とすると、COVID-19にかかっていない人が検査を受ける機会が増えたということで、検査数が増えても陽性者数はその割に増えず、いわゆる陽性率は低下する、ということになります。このことから、新しく医師の判断でPCR検査を行うように対象を広げても、実際COVID-19にかかっている人を効率的に拾い上げることにはつながっていない恐れもあるのではないかと考えられます。

これらの関係をみるには、帰国者接触者センターを通じた保健所の判断で検査を行っている場合と、医者が必要と判断した場合、この二つを分けてデータを取り、解析することが有効です。そして、その陽性率を比較すれば、今後の対応に有意義な知見が得られることになると思います。保健所の判断基準が必要かつ十分なものであるのか、さまざまな理由から抑制的に行われていると言われているがその通りなのか(検査を十分行っていないといえるのか)、逆に現場の医師の判断がどれだけ正確なのか、無駄な検査を増やしてはいないのか、がみえてくるので、是非公表してほしいデータであると思います。

マスコミは特に我が国のPCR検査の実施数が少ない、ということで問題視して報道していますが、果たしてPCR検査はこのCOVID-19にどれほど有用な診断法なのでしょうか。前にも書きましたが、PCRで新型コロナウイルス感染者を正しく感染していると診断できるのは高くて70%(30-70%)といわれています。すなわち、感染している人でも3人に一人は陰性と判定されるということになります。最近よく耳にするストーリー、退院決定のためのPCR検査で一旦陰性となったのに2回目に陽性となり退院が延びたとか、2回陰性となり退院したところ症状が再燃し検査をしたところ陽性だった、という話を聞いてもお分かりになろうかと思います。(そもそも2回検査をする必要があるということでもPCRでの判定の限界がわかるわけですが。)

PCR検査の実施数が少ないから死亡者数が少なく死亡率が低くなるのではという指摘も聞かれます。わが国では肺炎関連の診断能力は高く、また最近では死因不明の方に対しても死亡後PCR検査が行われており、これにより10数名の方のCOVID-19罹患が確認されたことも報道されています。したがって、わが国の発表されている死亡者数は完ぺきとはいかないまでも、検査せずに死亡した人はカウントから外している国々よりもかなり正確なものと評価できると思います。世界的に見てもPCR検査の実施数と感染者数、死亡者数、死亡率に相関はないことが会見の中でも示されていました。

PCR検査は治療ではなく単なる検査の一つであり、検査数を増やすと直結して死亡者数が減るという論理は、確実な治療法の存在しない現在成立しません。このことを受け止めて医療機関に過度の負担をかけるような受診の仕方は避け、冷静に行動したいものです。